待遇格差訴訟 納得して働ける賃金に

Last-modified: Sun, 26 Jan 2020 23:08:23 JST (1554d)
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(2018.6.2)
 正社員かどうかで、賃金に「不合理」な格差を設けることは許されないという判決を最高裁が言い渡した。 一方、定年後再雇用された人が仕事は同じなのに年収が2割下がったと訴えていた裁判では、最高裁はある程度のダウンは法律に違反しないとの立場をとった。 国会で審議中の働き方改革関連法案は「同一労働同一賃金」の実現として、どのような格差は許されないかを具体的に示したガイドライン案を公表しており、最高裁の判決も踏まえて、内容を進化させる必要がある。

 「同一労働同一賃金」と言っても、日本の場合はそれほど単純ではない。
・被雇用者に対する労働内容が必ずしも明確でなく、正確に「同一労働同一賃金」を遵守しようとすると賃金が月日とともに大きく変化し、不安定になる可能性がある。
・同一企業で生涯勤務した場合、賃金は初期と晩年が低く設定されるのが一般的で、「同一労働同一賃金」を謳う場合は、この習慣を見直す必要が出てくる。
・正社員はどちらかと言えば「仕事」をし、非正社員はどちらかと言えば「労働」をしている傾向にあるので、単純に「同一労働同一賃金」の比較ができない。
・賃金の高低は、「労働」内容だけで決まるものではなく、「異動」の可能性の有無や扶養などの「手当」によっても決まるので、「同一労働同一賃金」とはならない。

 「同一労働同一賃金」を徹底するのであれば、これらの日本の旧来的な慣習も含めて見直し、グローバルな賃金体系にする必要が出てくると思われる。

 「労働」はマルクス的な香りがする言葉なので、「同一労働同一賃金」の解釈を行うときにマルクス的な解釈に陥らないように注意が必要だと思う。

朝日新聞 社説:「待遇格差訴訟 納得して働ける賃金に