あおり運転 悲劇繰り返さぬために

Last-modified: Sun, 23 Dec 2018 23:08:49 JST (1969d)
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(2018.12.16)
 昨年6月に東名高速で夫婦と2人の子が乗る車の進路に割り込んで減速を繰り返すあおり運転を続けた末、最後は前に回って自分の車をとめ、停車を強いられた4人の家族が後続のトラックに追突され、死傷するという事故を引き起こした男の裁判員裁判で、横浜地裁は危険運転致死傷罪の成立を認めて、懲役18年の判決を言い渡した。

 懲役18年の長さの妥当性は別として、車を止めたことを咎めるのに、危険運転致死傷罪を適用することに違和感があり、検察側は適用させる法律に頭を悩ませたことがうかがえる。 男が行ったいけない行為は、あおり運転、車でふさいで相手の車を停車させたこと、相手を威圧して車外に導いたことなどを、高速道路上で行うという一連の行為によって、被害者は、後続のトラックに追突され死傷したということだ。

 これらの多くの行為を一つの法律に集約する必要があるとすれば、本来そこに法律の問題があるが、一つの法律で罰するとすれば、殺人罪ということにならないのだろうか。 崖の上の車を恣意的に車でぶつけて落とし、中に乗っていた人を死亡させた犯行に対して、交通事故として処理しようとするようなものだ。 崖から人を突き落としても崖の深さや下の状況などによって、被害の状況は変わると思うが、高い確率で死ぬと思われるような状況で死亡させれば、単純に殺人罪にならないのだろうか。

 最近、業務用トラックによるあおり運転はほとんどなくなったが、一般自動車のあおり運転が目立っているように思う。 業務用トラックのあおり運転が激減した理由を知らないが、全ての車にドライブレコーダーを取り付けるように義務付けるのはいかがだろう。 これが可能になれば、確実に犯罪抑止になると思われるが、技術的・経済的な課題もあるが、問題は個人情報保護だろう。

 事故や犯罪の時に限って、警察や検察など一部の限定された者だけが見ることのできるドライブレコーダーにするなど、何らかの方策がないものだろうか。 この場合、車検業者はもちろん、利用者も見ることができないと思われるので、利用者個人が見たいのであれば、個人用メモリーを別途取り付けられるようにする必要があるだろう。

朝日新聞 社説:「あおり運転 悲劇繰り返さぬために