がん見落とし 「全身を診る」が基本だ

Last-modified: Sat, 14 Sep 2019 15:35:32 JST (1704d)
Top > がん見落とし 「全身を診る」が基本だ
(2018.6.24)
 医療事故の分析にあたる日本医療機能評価機構によると、約1千の病院を対象にした調査で、15年1月から18年3月末までに、画像報告書の所見見落としなどが計37件報告された。 画像診断医が気付いたのに主治医が見落とした数は統計として収集できるが、両者の医師が見落とした数は収集できないので、主治医の見落としの実数はもっと多いだろう。

 画像診断医が発見したものが見落とされるというのは、いかなる理由があれ看過できない。 画像診断医がガンなどの病気の疑いを指摘した場合は、主治医は面倒かもしれないが、その指摘に対して問題なしとする場合は、それなりの見解を示すような電子カルテの仕組みにすべきだ。

 対策の一つとして、主治医が診断するときに患者にも画像診断報告書を渡すことにした病院もあるというが、いかがなものか。 画像診断医の診断内容がストレートに患者に渡された場合、ガンでもないものに対して、たまたま念のために画像診断医がガンの疑いなどと記した場合に、患者に余計な負担を掛けたりする可能性が発生する。 これでは、画像診断医が明らかなガンの疑いに対してのみ、報告書に記すようになる可能性もあり、単に主治医の診断ミスを患者と共有しようという責任逃れな対策はとるべきではない。 患者側から画像診断報告書の開示が求められたときのみの報告書提示で良い。

 自分の専門部位にばかり注意を払う職人的な医師も困るが、画像診断医、電子カルテや患者に依存しすぎる低レベルな医師が増えても困る。 医療の細分化・専門化も重要だが、病院総合医の養成も重要な課題だ。

朝日新聞 社説:「がん見落とし 「全身を診る」が基本だ