ネット犯罪摘発 行きすぎ戒める判決だ

Last-modified: Thu, 11 Apr 2019 23:13:24 JST (1859d)
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(2019.3.30)
 運営するウェブサイト上に、他人のパソコンの演算機能を無断で利用できるプログラムを仕組んだとして、刑法の不正指令電磁的記録保管の罪に問われた男性に対し、横浜地裁は無罪を言い渡したが、横浜地裁は、パソコンの電力消費量などサイトの閲覧者が受ける影響は軽微で、社会的に許容されていなかったとはいえず、公的機関による事前の警告などもない状態でいきなり摘発したのは、「行き過ぎ」だと批判して、無罪を言い渡したそうだ。

 この判決には多くの疑問が残る。 その被害が軽微であれば、他人の資源を無断で使用しても構わないというように解釈できる。 例えば、本人が使用していないときに、当人所有の自動車を無断で借用運転し、ガソリンも補充して何事もなく返却しておけば罪にはならないということなのだろうか。 新手の犯罪の場合、裁判所か検察か警察かは知らないが、「これをしたら罪になりますよ」と一般公開するまでは、検挙してはいけないということなのだろうか。

 いたずらと犯罪の切り分けも難しいところだが、イタズラというのは、犯罪にするまでもないレベルの軽度の「いけないこと」であり、回数も含め度を越せば、犯罪になるだろう。 罪になるかどうかの評価が割れているような犯罪の場合は、刑を軽くするという配慮は必要だとは思うが、無罪であったり、検挙した警察側が批判されるのはおかしいのでは。

 これらの背景の一つに、刑事裁判の有罪率の高さがある。 警察が逮捕した時点で、マスメディアなどが容疑者があたかも犯罪者のように扱ったり、容疑者が無罪になったら、検察や警察が不当逮捕ということで、非難されりするのは、すべて有罪率の高さにある。 有罪率の高さは、一見、検察や警察の優秀さを示す指標のようにも見えるが、この背景には、無実の者が強引に有罪にされたり、今回のような有罪の確証をもてない犯罪者を見過ごしてきていることが考えられる。
 もちろん、警察や検察の勘だけを頼りに、むやみに一般市民を検挙されても困るが。

朝日新聞 社説:「ネット犯罪摘発 行きすぎ戒める判決だ