初の司法取引 定着へ丁寧な説明を

Last-modified: Tue, 22 Jan 2019 18:27:46 JST (1938d)
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(2018.8.19)
 三菱日立パワーシステムズによる発電所建設を巡り、東京地検は、現地タイの公務員に賄賂を贈ったとして、元の取締役、執行役員、部長の3人を不正競争防止法違反の罪で起訴し、捜査に協力した法人としての同社の訴追を見送り、第1号の「司法取引」を適用した。 企業コンプライアンスが叫ばれて久しいが、これは、仮に企業担当者が業務上不法行為を犯していたとしても、企業が、それなりの順法体制ができており、しかも違法行為に対して厳しく対応していれば、企業としての罰は免れるというものだと理解している。

 今回の場合は、発見された違法行為に対しての処理は適切だったかもしれないが、違法行為が行われているときに、それなりの順法体制ができていたかどうかは疑わしい。 だからこそ、「司法取引」という新たな法律によって助けるしかなかったのかもしれない。 本来、「司法取引」は、実行犯と「司法取引」をすることによって、組織犯罪を暴くのが主目的だと思っていたので、今回の「司法取引」には大きな違和感を感じる。

 これが「司法取引」になるのなら、世の中の組織犯罪のほとんどは、危なくなったら組織が実行犯を警察に突き出して協力するポーズをつくることによって、「司法取引」に持ち込み、組織として逃げ切れることになる。

 「外国公務員への賄賂」については、日本だけですべて解決するのは難しく、まして一企業が、現地の公務員側から賄賂請求がある確率が高い地域での公共事業は受注できないことになり、公共事業を受注した他国を陥れることを可能にした法律のようにも受け取れ、これを「司法取引」で解決を図ろうとしたのであれば、筋違いだ。

 世界貢献でもあるはずの海外のビッグプロジェクトの受注は、1企業だけの問題ではなく、日本としても重要な問題であり、だからと言って法を犯しても良いというわけでもなく、民間企業の社員としてどうすれば良かったのかは、裁判官の知ったことではないかもしれないが、大きな問題を投げかけているように思われる。
 「外国公務員への賄賂」は確かに褒められたことではないが、欧米のルールのごり押しという感じがしないでもなく、日本政府の海外戦略としての方針を示してほしい。
(「日本版司法取引初適用事例」への“2つの違和感”)
(三菱日立パワーシステムズの幹部が「司法取引の犠牲者」となった背景)

朝日新聞 社説:「初の司法取引 定着へ丁寧な説明を