名古屋城復元 「共生」が問われている

Last-modified: Sun, 03 Mar 2019 22:59:02 JST (1898d)
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(2018.7.30)
 戦時の空襲で焼失し、戦後にコンクリート製で再建された名古屋城の天守について、名古屋市が建て替え計画を進めているが、市は、徳川家康の命で築かれ国宝にも指定されていた旧天守を木造で可能な限り忠実に再現するとして、天守に上がるためのエレベーターをなくすことにした。 これに、高齢者や障害者の円滑な移動を目指すバリアフリー法や、行政に障害者への合理的配慮を義務づける障害者差別解消法などに反すると障害者団体が抗議している。

 市が目指す本物志向と高齢者や障害者などの弱者との共生をしろとのことのようだが、どこまで本物志向にこだわるか、どこまで弱者と共生するかの兼ね合いであり、完全に当時と同じものを再現できないからと言って、弱者との完全共生のために本物志向が妥協しなければならない理由にはならない。 弱者が登山できないような山は弱者差別の山だから、エレベーターをつけるか、閉山にしろと言っているようなものではないか。 ちなみに、障害者でも一部だが登山する人は、それなりの準備をして登山している。

 一般の日常生活圏では、弱者と共生できるように努力する必要はあるが、観光に対してまですべて共生可能にする意味があるのか。 弱者にも名古屋城を体験できるある程度の仕掛けは必要だとは思うが、完全な共生よりは本物志向など観光価値の向上を優先するケースがあっても良い。 障害者団体は、完全共生以外は認めないなどという前に、どのように歴史資産や観光産業と共生できるかの知恵出しを市に対して協力してほしい。
 そのうちに、弱者を差別するような自衛隊を廃止しろなどと言ってこないか不安だ。

朝日新聞 社説:「名古屋城復元 「共生」が問われている