成人の日に 思考の陰影感じる世界へ

Last-modified: Sat, 19 Jan 2019 23:12:30 JST (1942d)
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(2019.1.14)
 30年以上のキャリアを持つオーストラリアの人気風刺画家、キャシー・ウィルコックスさんの作品で「怒りの時代に、ニュアンスある議論へ与えられた空間」として、黒と白の真ん中に引かれた、グレーの細い線の風刺画が昨年9月にツイッターに載せられ、すぐに1,500回近く「いいね」されたそうだ。

■SNS時代の議論
 名古屋大学大学院の大平教授(感情心理学)によると「SNSでは、同じ意見をほめ、異論は遮断できる。これを続けていると、異質のものを想像したり、中長期的に感情を制御したりする機能が低下するという考え方がある」そうだ。

 SNSでは、世界中の人の意見が飛び回り、自分と同じような意見を持つ人と語り合うことができたり、意見の異なる人に対して別の意見を言うこともできるが、ニュアンスというか、相手がどのような背景でその意見を、どの程度の強さで言おうとしているか、言葉の端々の行間も必ずしも的確に理解することはできないし、疲れてきたり、気が乗らなかったら、簡単に議論を中止することができるし、意見に対する責任も希薄だ。

■違いを超えて対話を
 SNSでは、発言の自由、賛同者や非賛同者の数がものをいうが、といって、少数意見が削除されることもない、世界中の多様な意見が飛び交い、表現の自由が保証される民主主義の世界だが、個人への中傷、個人情報の放出など、違法行為が許されるわけでもない。

 明らかな違法行為は当然いけないが、悪意の含んだ陰湿な攻撃とか、組織的なエゴを背景としたバイアスのかかった洗脳なども、民主主義が万能ではないことと同様、発言の自由にも課題がることを認識しておく必要がある。

朝日新聞 社説:「成人の日に 思考の陰影感じる世界へ