新出生前診断 安易な広がりが心配だ

Last-modified: Tue, 05 Mar 2019 20:31:11 JST (1896d)
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(2019.3.5)
 胎児にダウン症などがあるかを調べる新型出生前診断について、日本産科婦人科学会の指針に反して実施する認可外施設の存在を無視できないようで、学会が実施できる施設の条件を緩める指針改定案を公表し、現在、92ある認可施設をそれ以外でも条件を満たせば診断できるようにするという。

 認可外施設の診断に対しては、関連学会とともに認可外施設の医師や検査会社に中止を求め、妊婦にも注意を呼びかけてきたと言っているようだが、法律に触れるわけでもないようだし、認可外施設の診断がなぜいけないのかの説得力も乏しいようでは、認可外診断がなくなるはずもない。

 認可外施設で検査を受けることの問題点も明確でない状況で、認可施設だけを増やすというのは、一部の認可外施設を儲けさせるくらいなら、我々も診断をやらせてくれと言っているようにも取れ、そのうち、検査を受けるのが一般化し、安易に命が選別される事態を招かないかという懸念が残ってしまう。

 陽性が確定した9割以上が中絶を選択しているというデータがあるそうで、診断の目的の多くは中絶の必要性とも言えなくもなく、障害のある人や家族が置かれている厳しい状況も分からないわけではないが、障害のある人の生きる権利や生命倫理がからむ問題でもあり、学会だけで現状追認型で判断するような問題ではない。

 陽性だから中絶するという風潮は、多様な「生」を認めない社会につながる恐れがある問題であり、多様な分野の方々に国家レベルで検討していただき、診断の条件や認可施設を明確に設定し、違反者は法で罰せられるような仕組みも含めて検討する必要がある課題であり、多様性のある人たちが生活しやすい社会を、国として構成することも含めて、検討してほしい。

朝日新聞 社説:「新出生前診断 安易な広がりが心配だ