日ロ条約交渉 長期的視座で出直しを

Last-modified: Mon, 28 Jan 2019 21:17:11 JST (1932d)
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(2019.1.24)
 安倍首相がモスクワを訪ね、プーチン大統領との通算25回目の顔合わせとなる首脳会談をしたにも拘らず、今回も平和条約をめぐる溝は埋められなかったようだ。

 第1に、安倍氏は6月のプーチン氏の来日時に妥結を目指してきたようだが、プーチン氏は、長期的な作業が要ると強調したそうで、タイムリミットを持っている方が交渉に不利であり、安倍氏は弱みを握られたかたちだ。 昨年、無条件に平和条約を結ぼうとの提案のときに、すぐに乗らなかったことのツケが来ているとも言え、安倍氏の交渉のまずさが露呈されたといえる。

 第2に、国民支持率の低い安倍氏が、首脳同士の信頼関係に基づくトップダウンの打開を探ろうとし、リーダーシップのあるプーチン氏がまず国民の支持を醸成するのが不可欠との姿勢を示しているようだが、安倍氏がプーチン氏から良いようにあしらわれていることの証左であり、ロシア側は日本の譲歩をゆっくりと待っていると思われる。

 「北方領土」ということさえ認めないというのは、ラブロフ外相の自由であり、聞き流せばよいことであり、4島すべてがロシア領であることは確定済みで、議論の余地はないとの主張だそうで、ここまでくると、返還交渉はできなくなる。

 戦争で奪われた領土に対し、どちらに主権があるかの議論をすることに本来無理があり、ロシアが主権を主張して譲らないとすれば、議論を中止するか、主張を受け入れるか、より強い国に仲介を頼むか、戦争で奪い返すかなどのいずれかであり、タフな話し合いで解決するというものではない。

 既にロシア人が長期にわたって生活しており、中国人や北朝鮮人までもが入り込もうとしている現状では、北方領土の主権問題より、早急に平和条約を結んで共同使用を提案する方が現実的だ。 長期政権と言われながら、ロシア交渉においても、ほとんど進展のない安倍政権の外交交渉力に限界を感じる。
(日ロ平和条約 前のめり外交の危うさ)

朝日新聞 社説:「日ロ条約交渉 長期的視座で出直しを