森友問題と政治責任 社会のモラルを掘り崩す
■一部官僚に押しつけ
財務省がきのう、森友学園との国有地取引をめぐる決裁文書の改ざんなどに関する内部調査の結果と、関係者の処分を発表した。 一連の行為は国有財産を所管する理財局内だけで行われ、麻生財務相や事務次官には一切報告がなかったという。 これは、事件発覚時に問題を矮小化できるような事前措置として、一般企業でも散見される手法である。 政治家や官僚には、公文書の重要さが理解できていないのではないだろうか。 官僚のレベルの低下と、このようなことが可能なような文書管理に問題がある。
■麻生氏は即刻辞任を
麻生氏は再発防止に全力で取り組むとして、職にとどまる意向を表明し、首相も「麻生氏に責任を全うしてもらいたい」と支持した。 「改ざん」と「書き換え」の違いは、悪質なものかどうかのようであるが、必要があれば公文書の書き換えもよいかもしれないが、その場合でも書き換え前の公文書が破棄されないような仕組みが必要である。 麻生氏の続投については、安倍政権維持や自民党総裁選が背景にあると思われる首相の責任が大きい。
■1強長期政権の弊害
安倍1強体制の長期政権の下、公務員が国家への奉仕者としての使命を忘れ、時の首相に尽くそうとしているとすれば、公務員のレベルも落ちたものと言わざるを得ない。 仮に、官僚が長期政権に擦り寄るというのであれば、首相にもっと強力な官僚への人事権を与える方がまだすっきりする。
また、官僚が中途半端に首相に擦り寄るのは、党代表に権限が集中する小選挙区制に起因する。 日本が長い間低迷を続けていることの一因として、この小選挙区制があるのではないだろうか。 証人喚問が目的化しているような野党に期待できない現状としては、与党内で競争の原理が機能する中選挙区制に早く戻してほしいものである。
国の中枢でうそがはびこり、しかるべき立場にある人間が責任をとらず、組織はそれを正すことができない。 それは、一政権の問題を超えて、日大アメフット問題など、日本全体のモラルにも悪影響を与えているというのは言い過ぎだろうか。
政治にとどまらず日本全体の退廃に歯止めをかけなければならない。
日本は、いまその岐路にある。
朝日新聞 社説:「森友問題と政治責任 社会のモラルを掘り崩す」