精子提供 改めて議論をおこす時

Last-modified: Mon, 03 Dec 2018 23:20:37 JST (1988d)
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(2018.11.26)
 匿名の第三者から精子提供を受ける人工授精(AID)を最も多く手がけていた慶応大学病院が、提供時の同意文書に「生まれた子が提供者に関する情報開示を病院に求めた場合、応じる可能性がある」旨を明記したところ、新たな提供者の確保できなくなり、この夏から新規患者の受け入れを中止しているそうで、AIDが曲がり角に差しかかっているようだ。

 AIDには、AID自体が許されるのかという課題と、AIDを行ったとして、その子に出自を知る権利がどこまであるかという課題がある。 精子提供者と精子受入者との間の子ということで、一般の法律を適用させるというのであれば、これはAIDではなくなる。

 AIDであれば、精子提供者と精子を受ける側の同意があることが前提の、親というか大人の事情で成り立っているもので、子が生まれる前の時点で、子の事情は無視されるのが前提となり、精子提供者は子とは関係なく、精子受入者と、その配偶者がいればその配偶者との間の子ということで法律が適用されることになる。

 であれば、子の「出自を知る権利」を尊重したとしても、AIDにより誕生したということまで知りえるとしても、精子提供者が誰かまで遡る必要はないし、精子提供者への扶養の義務もなければ、精子提供者からの相続権もない。 逆に、精子受入者の配偶者は例え離婚したとしても、その子は相続権を奪われることはなくなるため、精子受入時には精子受入者だけでなく、その配偶者の同意も得ることは重要だ。

 将来的には、同性カップルにも拡大適用される可能性も想定する必要がある。 AIDでは生物学的な親子関係は初めから無視されるということが、生まれてくる子の立場に立った法解釈になると考える。

朝日新聞 社説:「精子提供 改めて議論をおこす時