高速炉開発 仏実証炉からの撤退を

Last-modified: Sun, 05 Jan 2020 12:01:51 JST (1591d)
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(2018.6.17)
 日本が協力する高速炉「アストリッド」計画について、開発主体のフランスが規模を大幅に縮小する方針を明らかにした。 海外の計画に頼って高速炉開発を続けようとすることに無理がある。 実証炉の前段の原型炉「もんじゅ」の廃炉を決めた際に、アストリッドの共同開発を核燃料サイクル継続の柱にすえるという、安易な他国依存を止め、日本は早急に計画を見直すべきだ。

 巨費を投じたもんじゅは、20年あまりの間ほとんど動かず、めざす成果のごく一部しか達成できなかった。 これは本当に技術的な問題だったのだろうか。 役人気質のマネジメント、一部の原発反対勢力や政府のエネルギー政策のなさが招いた結果ではなかったろうか。 もんじゅ廃炉を決めながら、問題を総括せずに従来の政策に固執したり、代替策としてアストリッドに飛びついて、問題点の先送りをしただけではなかったのか。 日本が開発を続けようとしても、普通の原発の新規立地すらできない現状では、国内に実証炉を建設することは極めて難しい。

 日本のエネルギー政策は、経産省なのか文科省なのか、双方の協力体制にも問題があったのでは。 政府の難題の多くは、各省に跨る課題であり、いつまでも省庁間の縄張り争いなどしているような国力の余裕はもはや我が国にはない。 文系の役人や政府に原発問題を任せられないと思ったりしたが、最悪の政府は、理工系の総理大臣のときだった。 エネルギー政策は、防衛政策と同様、国家の存立に係る課題である。 原子力政策の抜本的な見直しの議論を、これ以上先送りしてはならない。

朝日新聞 社説:「高速炉開発 仏実証炉からの撤退を