AI時代の憲法 いま論ずべきは何なのか

Last-modified: Tue, 18 Jun 2019 22:07:50 JST (1776d)
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(2019.5.3)
 『AIと憲法』を出版した山本慶応大教授は、「AIによる人間の仕分けが、差別や深刻な排除を生む可能性があります」と語っておられるそうだ。

■揺らぐ「個人の尊重」
 AIによって人間が評価され、理由説明もないまま社会から切り捨てられたり、SNSなどを使って有権者を特定の投票行動に心理的に誘導されたりする可能性があることに警鐘を鳴らしておられるようだ。
 現在でも、本人に本当の理由説明もなく、あるいは表向きの理由説明だけで社員を評価していることは、残念ながら多くの企業でなされていると思われる。
 また、特に米国などで、SNSなどが有権者の投票行動に大きく影響を与えているようだが、特に日本で、マスメディアによる心理的誘導が現状でも問題になっている。 AIの発達と普及により、これらがより顕著になされることは確かに予想される。

■改憲ありきのひずみ
 AIなど技術の進歩により複雑・高度な社会構造になったからといって、憲法の見直しの必要が発生するとは思えない。 今後の技術進歩と現行憲法を見据えて、法律を見直すのが順当なやり方だ。
 技術とは別に、複雑化した社会に適応させるための憲法の見直しは必要だ。

■主権者こそが考える
 「健康で文化的な最低限度の生活」は、時代と共に変化していくものであり、それに追随して憲法を変える必要は当然ない。 裕福な国では最低限度の生活レベルは高くなるが、貧乏な国では最低限度の生活レベルも低くなるのは仕方がないことだ。 例えば、主権者が年間労働時間を下げたいのであれば、最低限度の生活レベルも低くなるのは当然のことだ。

 日本に来ておられる外国人の方の人権などを考えてあげるのは重要なことだが、憲法における主権者は日本国民であり、外国人は含まない。 このことを理解せずに人権なり法律を考えると、AIとは関係なく社会は混乱する。

朝日新聞 社説:「AI時代の憲法 いま論ずべきは何なのか