iPS臨床 「安全」優先で着実に

Last-modified: Tue, 22 Jan 2019 21:19:00 JST (1938d)
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(2018.8.17)
 iPS細胞からつくった神経細胞を、パーキンソン病の患者の脳に移植する京都大の臨床試験(治験)が国の機関で認められ、参加者の募集が始まり、製薬会社と連携し、広く治療が受けられる公的医療保険の適用をめざすという。 5月にiPS細胞由来の心筋シートを心不全の患者に移植する大阪大の臨床研究が了承されており、iPS細胞の発見から約10年間、異例の早さだそうだ。

 日本の役所関連は、常に時間がかかり、基礎研究も実用化に結びつける過程で後れをとってきたというが、それが早く実施されることは良いことだ。 ただ、脳への移植というリスキーな再生医療に対し、ただ早ければ良いというものでもない。

 ノーベル賞を受賞したiPS細胞ということで、批判しにくい空気が判断を早くしている背景にあるとしたら、それは危険だ。 万能細胞としてES細胞などもあるし、女性の化学者が絡んでいるからか、訳の分からない理由と空気で、あっという間に闇に葬られたSTAP細胞というものが過去にあった。

 ブランドに弱い日本では、ノーベル賞案件中心に予算取りなどが行われるという傾向がないだろうか。 客観的な根拠による戦略はもちろんだが、一点集中ではなく、いくつかに分けた柔軟な戦略も求められる。

朝日新聞 社説:「iPS臨床 「安全」優先で着実に