デジタル通貨 課題の見極めを急げ

Last-modified: Wed, 28 Aug 2019 21:00:36 JST (1705d)
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(2019.8.27)
 「デジタル通貨」をめぐる議論が新たな局面を迎えているそうだ。 「デジタル通貨」の議論を分かりにくくしていることの一つに、「デジタル」と「通貨」のそれぞれに係る課題の混在にあるような気がする。 「デジタル」とは、最新のIT技術をどのように駆使して流通・交換するかということであり、「通貨」とは、通貨発行者がどのような組織であり、どのように運用しようとしているかということである。 

 「デジタル」(IT化)の課題はいくつか考えられる。 通貨の流通については、相手があることもあり、金融機関が一方的に最先端のIT化を図れないという制約もあるためか、IT化が遅れる傾向にあった。 今後の通貨の流通については、従来の遅れた流通技術を残すかどうかは別として、最新のIT技術で、安価で追跡可能な流通システムを構築する必要がある。 ここでの課題は、個人情報保護を保障したうえでの、国単位の法律に順じた情報開示可能な、国家による追跡性の確保だ。

 「通貨」(発行者)の課題もいくつか考えられる。 通貨は、一般に国家が発行するが、EUのように国家集団が発行するものや一企業が発行する場合もあり、一般に通貨発行権の制限はない。 誰でも自由に発行できる「通貨」を、誰がどのように承認するかが課題となり、政権側がどのような制限を設けるかが課題となる。 ビットコインのような国家などから独立した通貨は、交換比率の不安定さだけでなく、資金洗浄、闇組織への資金提供や課税などの側面から、決済での課題を持つ。
(日本とアフリカ 共に発展する伴走者に)

 通貨の発行は国家が自国の責任のもとで発行すべきもので、企業や個人が発行する場合は、他の特定通貨と固定レイトにするか換金不可にするかのいずれかを明確に公開する必要があるべきだ。 また、株式のように交換比率が随時変更される場合は、その交換比率の公正性を担保するような規制が必要となる。

 結果として、円やドルなどの国家が担保する通貨と一定の交換比率で交換可能な通貨は、交換不能な通貨と明確に区別し、金融資産として国家による規制・監督を受ける必要がある。 円やドルなどと交換可能な通貨(金融資産)は、それ以外のものと交換する場合は、売買(売上)として処理し、他国への金融資産の移動は確実に該当国家に対して可視化される必要がある。

 金融制度やITインフラが脆弱な国家が発行する通貨があるとすれば、世界で通用する金融資産とみなすべきでなく、一般金融資産と交換不可とすべきで、仮にその交換を行う国家があるとすれば、その国家との金融資産流通は禁止すべきだ。

 これらの金融改革に追随できない既存の金融機関があるとすれば、金融機関の倒産が多発する可能性もあるが、ある程度の倒産は覚悟する必要はあるだろうし、従来の金融機関での預金や融資の位置づけが大きく変わる可能性もあるのだろう。

朝日新聞 社説:「デジタル通貨 課題の見極めを急げ