官民ファンド 「事務的失態」なのか

Last-modified: Fri, 21 Dec 2018 23:35:31 JST (1970d)
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(2018.12.12)
 2兆円規模の官民ファンド、産業革新投資機構の田中正明社長ら代表取締役4人と、社外取締役5人が、発足から3カ月もたたずに辞意を示し、立ち上げた傘下ファンドも清算するそうだ。 世耕弘成経産相は「政府内で確定しているわけではない報酬案を紙でお示しした『事務的失態』については、深くおわびする」と述べ、経済産業省は、文書で示した高額報酬の制度案を、機構側が取締役会で決めた後になって一方的に撤回したという。

 取締役会で決めたものを政府が撤回するというのは理解に苦しむが、政府の誰がどのような経緯で撤回するという判断を下したのかも不透明でよく分からないようだ。 官民ファンドの性格があいまいのようで、政府の政策に応じた方針に従って投資を行うなど、政府の意のままに動く機構をイメージしていたようだ。

 しかし、機構の経営者にとっては政府は株主でしかなく、基本的には民間ファンド同様、株主への説明責任はあるものの、株主から独立して任せられたファンドであるとの認識のようで、この民間では当たり前のことが官僚には理解できず、「事務的失態」というしかなかったのだろう。 官民ファンドの経営陣は、このことに気づき、傷口を広める前に涙をのんで早期退陣に至ったようだ。

 官民ファンドは、多くの政府機構のように、官僚の思うがままになる権限と就職先の確保を主体としたものなのか、民間資金の呼び水として日本経済を停滞から成長軌道へと定着させようとするものなのか、安倍政権は何のために官民ファンドを設立しようとしたのかが問われる。
(官民ファンド 役割踏まえた報酬に(朝日社説:2018.12.6))

朝日新聞 社説:「官民ファンド 「事務的失態」なのか