政治改革30年の先に 権力のありかを問い直す

Last-modified: Tue, 08 Jan 2019 13:28:20 JST (1953d)
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(2019.1.1)
 1989年5月、自民党は「政治改革大綱」を世に出し、大綱で、政権交代の不在と「緊張感の喪失」を日本政治の欠陥と見なし、衆院への小選挙区制導入をうたって、30年が経過し、自民党一党支配の55年体制は崩れ、政権交代が起きたこともあったが、目指したはずの「二大政党」になったのだろうか。

■小選挙区制は失敗?
 死に票が多く博打性の高い小選挙区制は、政治の不安定をもたらすだけでなく、党内では党代表への権力の集中が起きやすく、政界全体でも1強多弱状態が発生しやすいが、これを長所と見るか、短所と見るかだ。

 以前の中選挙区制の場合は、自民党には派閥があり、必ずしも党代表への直接的な権力の集中もなく、派閥内での人材の育成と派閥間の適度な競争原理が働いており、それなりの緊張感も働いていた。 批判だけしている無責任な野党に、だめなら元に戻せばよいから一度政権を取らせてみたら、などと簡単に政権を取り替えることの恐ろしさを日本国民は2度も経験している。

 公明党にはその気がないようだが、何度か連立政権を経験させて実績を見てから政権を託すのが、リスクの少ないスムーズな政権移行だ。 中選挙区制が、政治とカネの温床との論理があるようだが、そんなものは選挙区制とは何の関係もなく、安倍一強を批判するのであれば、小選挙区制をすぐにでも廃止すべきだ。

■弱い国会を強くせよ
 国会を構成している政治家のレベルを上げることが重要だが、今の政治家は政局ばかり見ている弱小野党と、代表だけを見ている巨大与党では、政治家は育成されない。

 中選挙区制時代には、派閥というものがあり、派閥が組織として、それぞれ自らの派閥の政治家を派閥のカラーに競って育成していた結果、派閥に属している政治家は政策などにも精通していたが、今の自民党では党としてそれなりの育成をしているだけであり、二世政治家でもない限り、小選挙区制以後の政治家を育てる仕組みがないことが大きな問題だ。

■解散権の行使再考を
 首相や与党に解散権があるのは民主主義体制では仕方がないことであり、解散権に影響を与えるものがいるとすれば、与党の派閥の長であり、派閥を潰してしまえば、その抑止も働かなくなる。 派閥がなくなれば、その大政党は弱くなり、小政党に政権のチャンスが生まれることは事実かもしれないが、それは官僚を強くすることはあっても、日本を強くすることにはならない。

 自民党に応援したいわけではないが、派閥反対は、大政党である自民党を潰すための戦略としては有効だが、自民党に取って代わる政党も大政党になる必要があるので、派閥が必要になってくるはずであり、結局は、中選挙区制と派閥政治を取り戻すことが強い日本を取り戻す第一歩になる。
(3選はしたものの 安倍1強の限界明らかだ(2018.9.21))

朝日新聞 社説:「政治改革30年の先に 権力のありかを問い直す